はじまりは政略結婚
顎を引き上げられた時には、キスをされるんじゃないかって思ってしまった。

とはいえ、それを期待していたわけじゃない。

ただ、もしあの時キスをされそうになったら、私はどうしたんだろうなんて、お風呂に入りながら一人考える。

それにしても、智紀のお風呂は贅沢を絵に描いたようだ。

窓が広く、パノラマの様に夜景が見える。

バスタブは、大人5人は余裕で入れそうなくらい広かった。

床は大理石仕様で、置いてあるシャンプーやリンスも有名ブランドのもの。

つくづく、私の実家の質素ぶりを思い知らされていた。

「そろそろ出ようかな……」

次は智紀が入らなければいけないし、荷物の整理もしないといけない。

どうやらパーティーの間に、私の荷物はここへ運ばれていて、ざっと見た限り全ての物があった。

これで、私のここでの生活が確定したようなものだ。

これから毎日、智紀と顔を合わせるのかと思うと緊張する。

ルームウエアに着替えて出ると、その智紀に声をかけられた。

「先に寝室に行ってて」
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