はじまりは政略結婚
だって、あきらかに海里に恨みがないと売らないような内容だ。

それも、多くの人が知らない話で……。

そして何より、海里が売っていたネガと写真を智紀が手に入れたこと。

私はお金で解決をしたと思い込んでいたけれど、もしかしたら記事の交換だったのかもしれない。

そんな心にモヤモヤを抱えながらオフィスを出ると、ビルの玄関口で兄に声をかけられたのだった。

「由香、タイミング良く会えて良かった。今帰りなんだろ?」

ビジネスカバンを持っている兄は、いつもと変わらない笑顔を向けている。

そんな兄に、私は笑顔を返せなかった。

「うん。お兄ちゃんは? 今から得意先まわりとか?」

「いや、オレも帰り。今日は珍しく早く帰れるんだ。これから予定がないなら、少しお茶でもしないか?」

お茶なんて気分には到底なれないけど、兄とゆっくりできるのもそうそうない。

「そうね、お茶でもしようかな」

兄の誘いに、頷いたのだった。
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