はじまりは政略結婚
「ああ、実は知らない。最終的に決着をつけたのは智紀で、それについては詳しく聞かなかったからな」

ため息混じりに話すと、「海里の過去は、オレも知らなかったし……」とブツブツ言っている。

「じゃあ、お兄ちゃんは何で智紀じゃないって言い切るの? だいたい、人のプライバシーを簡単に手に入れられることにも、抵抗あるんだけど……」

一口カフェラテを飲んだ私に、兄はさらに厳しい視線を向けた。

「由香は、智紀を疑ってるのか?」

「えっ? そ、それは……」

いつになく怖い顔の兄を見て、『そうだ』とは、とても言えない。

普段は私に激甘な兄も、さすがに親友の智紀を疑われるの気分が悪いらしい。

すっかり怖気づいた私は、返事もできずに伏し目がちになった。
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