はじまりは政略結婚
本当に今日は散々で、泣きたくなる。

智紀についで、兄とも険悪な雰囲気になるなんて最悪だ。

黙々とカフェラテを飲む私と同じく、兄も黙ってコーヒーを飲んでいる。

この重い雰囲気を変えたくて、何か話そうと思うけれど話題が見つからない。

すると、ようやく兄から話しかけてくれたのだった。

「今度、時間があった時に、涼子に会ってやってくれないか? 由香に、どうしても謝りたいらしいから」

「涼子さんが? そんな……。気にしなくていいのに」

人を好きになる気持ちを、責める権利なんて誰にもない。

それに、涼子さんは私から智紀を奪いたかったんじゃない。

自分のやり切れない気持ちを、整理したかったのだと、吹っ切れた彼女を見て私なりに出した結論だ。

「由香なら、きっとそう言ってくれると思ってたんだけど、涼子の気が収まらないみたいだから」

コーヒーを飲み干した兄が、腕時計で時間を確認した。

「もうそろそろ、帰るか。智紀も、今日はそんなに遅くならない感じだったから」
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