はじまりは政略結婚
「うん……」

結局、最後は智紀のことで終わりそうだ。

早く帰って、仲直りをしろと言いたいに違いない。

急いでクッキーを食べ、カフェラテを飲み干す。

それを見た兄は早々と立ち上がると、ふたり分のトレーを片付けてくれた。

「お兄ちゃん、ありがとう。お茶までご馳走してもらっちゃって」

店を出たところで立ち止まる。

お互い帰る方向が違うから、ここでお別れだ。

「いや、たいしたものじゃなくてごめんな。それより、送れなくて悪い。これから、顔出しするところがあるから」

「ううん。全然大丈夫。じゃあね、お兄ちゃん」

きっと、涼子さんに会いに行くんだろうな……。

今となっては、兄たちが羨ましい。

ずっと、厳しい表情のままの兄は、「じゃあ、またな」と言い残し足早に帰っていった。
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