はじまりは政略結婚
「オレは、そんな由香が好きなんだけどな。バカ正直っていうか、素直というか……」

「それ、褒めてるの?」

口を尖らせる私の頬を、智紀は右手で優しく触れた。

「褒めてるよ。本当に安心出来るんだよな。由香を見てると」

それは、癒し系とでも言ってくれているのだろうか、そんな嫌みでも口にしてやろうかと思った瞬間、彼の顔が至近距離まで近付いてきた。

あと少し動けば唇が触れそうなくらいで、心臓の鼓動が一気に跳ね上がる。

「嫌なら抵抗しろよ。じゃないとキスするぞ?」

「え……?」

やめて欲しいなら、本当に抵抗しないと。

そう思うのに、なぜだか私は何もしないまま、まるでキスを待っているみたいだ。

すると、じわじわと彼の顔が近付いてくる。

どうして私は抵抗しないのだろう。
相手は、ずっと苦手に思っていた人なのに……。

だけど私は自然と目を閉じて、そして次の瞬間には智紀の唇が重なったのだった。
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