はじまりは政略結婚
思いのほか優しく触れるようなキスに安心したのも束の間、彼の舌が口の中に入ってくる。

「ん……、ちょ……」

かろうじて小さく抵抗し唇を離そうとすると、頭を押さえられてそれは阻まれた。

頭がクラクラするくらいに智紀が舌を絡ませてくるから、体が熱くなってくるのが分かる。

雰囲気に酔っているのか、キスを受け入れている理由が自分でも分からない。

ただ言えることは、それを嫌だとは思っていないということ。

むしろ、気持ち良く感じていて、そんな自分に驚いてしまった……。

それから数分は経ったのか、お互い少し息が切れて、唇が離れた時には頭がボーッとしていた。

そんな私に、智紀は小さく笑ったのだった。

「寝るか。今夜は何もしないから、一緒にベッドへ入ろう」

「えっ⁉︎ ”今夜は”って、どういう意味?」

流されるまま横になりかけた私は、体制を整え直す。

すると、智紀はすっとぼけた様に言ったのだった。

「そりゃあ、あんなに好きだった由香が目の前にいるんだからさ。どこまで我慢出来るか、正直自信がない」
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