はじまりは政略結婚
「そうだよ。あの記事、売ったのは実の母親だなんて笑えるだろ? よほど、生活に困ってたらしいんだ。自分勝手に生きてきて、挙句息子の過去を売るなんてな……」

実のお母さんが記事を売った……?

それがどれほど海里を傷つけたか、考えなくても分かる。

切なさがこみ上げた時、海里が私を抱きしめた。

押し倒されたまま抱きしめられ、まったく抵抗できない。

「だから由香、お前だけはオレの側にいてくれないか? オレは絶対に変わるから」

「海里……」

すがるような彼の言葉に、胸が痛んで言葉が出ない。

と、その時勢い良くドアが開いて、智紀が入ってきたのだった。

「何をやってるんだよ! 由香から離れろ!」

険しい顔の智紀は、力任せに海里を私から引き離すと、そのまま突き飛ばした。
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