はじまりは政略結婚
「智紀……、何で分かったの?」

手を引っ張られ立ち上がると、智紀が私を睨んだ。

「警備員から連絡がきた。由香が来たけど、様子がおかしかったって。ヘタな変装は、かえって怪しいんだよ」

無造作に散らばっている変装グッズに目を向けた彼に、海里が起き上がり鋭い視線を向けた。

「さすが、副社長。よくこの場所が分かったな」

「由香が変装してまで会いにくる相手は、お前しかいないだろ。調べたら、お前がここの鍵を持っていってるのが分かったんだよ」

ふたりとも、険しい表情を崩さないまま、今にも殴り合いになりそうな雰囲気だ。

「また調べたのか。怖いな。副社長、あんたにかかれば、プライバシーも何もないな。オレのことも調べて、事務所のことも調べて、ライバルを潰すつもりなんだろ?」

挑発的な海里の目は血走っていて、呼吸は荒い。

だけど、智紀は動揺なんてしていなかった。
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