はじまりは政略結婚
「これは、オレたちの指輪……」

ようやく顔を上げた海里の目は、真っ赤になっている。

「うん。私も持ってたの。海里と別れてから、心の整理まで時間がかかったから。だけど、もう持っている意味はないし」

さらに差し出すと、海里はその手を掴んだ。

「どうしても、やり直せないのか? オレは変わる。約束するよ」

必死の形相の海里に、私はゆっくり首を横に振った。

「海里は、そのままでいいのよ。そこに私が合わなかっただけ。海里の言葉に一喜一憂しながらも、それを伝えられなかった。ありのままの自分を出せない関係なんて、一緒にいてもいつか息が詰まるわよ」

「そんなことはない。オレに努力が足りなかったんだ」

「ううん。違うってば。私が付き合っていた頃、海里の過去を聞こうともしなかったのは、しょせんそれだけの愛情だったってことよ。だから、私は海里とやり直せない。ごめんね。これは返すから」
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