はじまりは政略結婚
「そうみたいね……。疑って、本当にごめんなさい」

頭を下げた私に、彼は優しい口調で答えてくれた。

「そんなに謝ることじゃないだろ? 疑われる自分に問題があるんだ」

予想外にすんなり許してもらえて、思わず顔を上げる。

「でも、ゆうべあんなに怒ってたじゃない」

拍子抜けすると、智紀もポカンとした。

「怒ってた? ああ、あれは由香にじゃなくて、記事を売ったヤツにだよ。疑いを晴らすには、張本人を突き止めるのが一番いいと思ってたから」

「え? そうなの……? じゃあ、書斎に籠ってたのは?」

「だから、どうやって突き止めようか考えてたんだ」

そういうことだったのかと、真相が分かると力が抜ける。

すっかり緊張の糸が切れた私を、智紀はゆっくり抱きしめた。
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