はじまりは政略結婚
口を尖らせる智紀に、私は苦笑いを向けた。

「だって、智紀は最初から私を受け止めてくれてたじゃない。だけど、結局は疑ってしまった自分が情けないわ。私、一瞬でも智紀を疑っちゃった……」

うつむく私の頭を、彼は優しく撫でる。

「誰だって、オレならやりかねないと思うよ。それでも、海里を拒絶してくれたじゃないか。指輪だって持ってきてた。最初から、あいつを受け入れるつもりなんて、なかったってことだろ?」

「うん。そうだよ。私は、やっぱり智紀を好きだから……」

顔を上げると、穏やかな笑みを浮かべる智紀の顔が近づいてきた。

「キスを避けられたことが一番ショックだったな。今、埋め合わせしてくれる?」

「う、うん……。あの時も、本当にごめんなさい。海里のことで頭がいっぱいで……」

「もういいよ。それより、黙って」

そう言ったかと思うと、智紀は私の唇を塞いだ。
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