はじまりは政略結婚
「智紀……」

胸が熱くなり、嬉しさで頬が緩みそうだ。

そんな私に穏やかな笑みを浮かべた智紀は、パソコンに向き直った。

仕事が忙しそうなのに、私を助けにきてくれたんだ……。

いつでも、どんな時でも私を想って行動してくれる。

その優しさは、きっと海里も持ってくれていたんだろうけど、私はそれに気づけなかった。

それなのに、苦手に感じていた智紀のことは、すんなり違う目で見ることができたのは、なんでだろう。

きっと最初から、私は智紀と運命で結ばれていたんじゃないかなって思えてくる。

だけどそれは、恥ずかしいから口に出さないけど……。

それにしても、仕事をしている智紀の表情は真剣そのもので、集中力がすごい。

そんな姿をただ見ているだけでも、心から幸せを感じていた。
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