はじまりは政略結婚
「よし! 終わった。ごめんな、由香。すっかり遅くなったよ」

あれから二時間経ち、ようやく仕事が終わったらしい。

両手を上げて伸びをする智紀は、申し訳なさそうな顔をした。

「引き止めておいて今さらだけど、退屈だったろ? ごめんな」

「ううん。むしろ、仕事姿が見れて嬉しかった。智紀ってば、あんなに英語がペラペラなのね?」

興奮気味の私は、帰り支度を済ませた智紀に肩を抱かれ、一緒に副社長室を出た。

「ああ。仕事柄、外国人と接することも多いからな。特に歌手なんかは」

さらりと言っているけど、たしかに歌番組やバライティで、海外の有名歌手がゲストで来たりする。

「まさか、智紀が番組出演とかの調整してるの?」

さらにテンションが上がる私に、智紀は少し呆れ気味に笑った。

「全部じゃないけどな。そういうのもあるんだよ」

「すごい……。新たな智紀の一面が発見できて、惚れ直しちゃった」
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