はじまりは政略結婚
いつの間に、そんな話になっていたのだろう。

呆気に取られていると、兄は頭を下げたまま説明してくれた。

「実は、涼子に子どもができたんだ」

「ええー⁉︎ 子どもって、お兄ちゃんの子ども?」

勢いづいて膝立ちをした私は、兄の側へ近づいた。

だけど、ふたりとも顔を上げてくれない。

「そうだよ。だから、入籍を早めにするつもりなんだ。ただ、由香たちの結婚式より前に、オレたちが式を挙げるわけにはいかない。だから、挙式は未定なんだけど……」

涼子さんに赤ちゃんができたなんて……。

それも、兄の子と聞いて感動する。

興奮する気持ちを抑えながら、兄に声をかけた。

「ねえ、お兄ちゃんも涼子さんも顔を上げてよ。どうして、私たちより前に結婚式をしちゃダメなの?」
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