はじまりは政略結婚
途中で彼と別れると、なぜだかとても心細く感じる。

やっぱりそれは、ここがテレビ局だからかもしれない。

言われた通りのエレベーターを使いながら降りて行く途中、テレビで何度も見かけたことのある、今人気の若手俳優と一緒になった。

緊張でチラチラとしか見れなかったけど、ふと思ったのが、智紀は俳優にも負けないオーラとカッコよさがあるということ。

きっとここに彼がここにいても、見劣りしないと思う。

そんな人と、私が並んで歩くことに、やっぱり違和感を感じずにはいられなかった。

一緒にいるのが……例えば涼子さんのような綺麗な人なら、きっと智紀も映えると思うけど……。

「仲良さそうだったしな……。実は智紀の好きな人だったとか」

そう考えて、慌てて思考を頭から消す。

仮にそうだったとしても、気にすることじゃない。

智紀が誰を好きだったかなんて、私には関係のないことだから。

エレベーターを降り、正面玄関まで着いて、ふと隣接するカフェが目に入ったのだった。
< 68 / 360 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop