はじまりは政略結婚
シックでオシャレな雰囲気は私好みだけど、見える限り客層が垢抜けた人たちばかりで、気後れしてしまいそう。

「この格好は、やっぱり地味だったかな……」

自覚はあるのだけど、それを変える勇気がない。

ちょうどいいから夕飯をそこで済まそうかとも思ったけれど、やっぱり何か買って帰ろうとテレビ局を出ようとした時だった。

「副社長の婚約発表ビックリしたよねー。里奈ってば、かなりショック受けてたよ?」

そんな話声が聞こえてきて、私の足は止まったのだった。

小さく振り向くと、ちょうどカフェに入っていく女性二人組がいる。

二人ともすらっと背が高く、一人は白いシャツにクリーム色のくるぶし丈のパンツ、もう一人は薄い黄色のサテンの薄手ニットにジーンズ、という出で立ちだ。

彼女たちは、栗色のロングヘアを風になびかせながら歩いている。

「里奈さんて、お兄ちゃんが打ち合わせをするって言ってた人よね?」

ポツリと呟いた後、吸い寄せられるように、私もカフェへ入ったのだった。
< 69 / 360 >

この作品をシェア

pagetop