はじまりは政略結婚
いつの間に智紀に連絡をしていたのか、警備員に気を取られ気付かなかった。

「そうですか……。ありがとうございます」

とりあえず、会いに行っても大丈夫みたいでホッとする。

案内されたエレベーターは、社長室と副社長室のあるフロアに直行するものらしい。

主に来客用に使うものだとかで、特別な操作をしないと作動しないみたいだ。

そんなのもあるのかと、うちの出版社との違いに驚いてしまう。

ほどなくして着いた場所は、社長室よりワンフロア下にある副社長室で、銀色の扉を受付の人がノックしてくれた。

すると、中から智紀の「どうぞ」の声がして、いまさらながらに緊張してしまう。

「百瀬様、お入りください」

彼女はそこまで案内してくれると、戻っていったのだった。

もう戻ることは出来ないし、入るしかない。

ドキドキしながらゆっくり進むと、正面のデスクにいた智紀が立ち上がった。

「由香、一体どうしたんだよ? 何かあったのか?」

デスクは書類が山積みになっていて、見るからに忙しそうだ。
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