はじまりは政略結婚
だから、毎日朝早くから夜遅くまで働いているのに……。

それなのに衝動的に来てしまい、自己嫌悪に陥ってしまう。

こういうところが、私はウザいのかも……。

と、忘れかけていた辛い記憶を思い出しそうになり、慌てて心の中で打ち消した。

一週間ぶりに、まともに顔を見たら、智紀に対して今まで感じたことのない感情が湧いてくる。

心配そうな彼は、私の側へやって来て、優しく手を取った。

「どうしたんだよ、黙ってたら分かんないだろ? あ、もしかして祐也とケンカでもしたか?」

小さく首を横に振ると、智紀は「うーん」と唸りながら、本気で考え込んでいる。

仕事を中断させて申し訳ない気持ちでいっぱいなのに、彼は真剣に私のいつもと違う様子の原因を探ろうとしていた。

きっと今、とても心配させている……そう思ったら、自然と言葉が出ていたのだった。

「智紀に会いたかったの」
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