はじまりは政略結婚
「まさか、由香が会いたがってくれていたとは思わなかったよ。ごめんな、これからは気をつけるから」

智紀はそう言って再び唇を塞ぐと、手を胸へ伸ばしてきた。

服の上からとはいえ、優しく鷲掴みにされて、思わず甘い声が漏れる。

それがあまりに恥ずかしくて、両手で顔を覆った。

「由香、嫌だったら抵抗して。じゃないと、自分が止められない」

ゆっくり手を離すと同時に、智紀はまたキスをする。

そして唇は、少しずつ首筋へと移動した。

自分でも信じられないくらいに声が漏れてしまい、抵抗するどころじゃない。

呼吸を乱す私に、智紀は戸惑いを見せながら聞いてきたのだった。

「いいのか? 本当に止められないぞ」

抵抗しない私を不思議に思っているのか、彼はもう一度、念押しをしてきたのだった。

私だって、こんなことをされながら、嫌な気持ち一つしないことが信じられない。

小さく頷くと、智紀はさっきより強引にキスをして、じれったそうに服を脱がせたのだった。
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