はじまりは政略結婚
「智紀……」

ベッドの上の彼は、優しくも激しく私を抱いてくれる。

こんな風に素肌で抱きしめ合っていることが、とにかく不思議で仕方がない。

私が智紀を受け入れたい気持ちになるなんて、それはいつの間か恋に落ちてしまったからなのか。

認めたくないけど、そうなのかも……。

「由香、好きだ」

智紀がそう言ったと同時に、ベッドのスプリング音が速くなって、私は何も考えられなくなっていった……。


ーーーー
ーーー
よく考えたら、智紀は私を好きだと言ってくれてるのに、私はそれに応えていない気がする。

だけどそれは、ハッキリそう言えるだけの自信がないからだ。

「由香、せっかく二人でいるのに、何を考えてるんだ？」

ベッドで、私たちにとって初めての夜の余韻に浸っていると、智紀が少し不満げに聞いてきた。

「あ、ううん。別に何でもないよ」

改めて顔を合わせると恥ずかしい。

視線をそらした私を、智紀はギュッと抱きしめた。

まだ汗ばむ体が妙にリアルに感じられて、おさまっていたドキドキが蘇る。
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