はじまりは政略結婚
智紀は優しく微笑みながら、布団をかけ直してくれる。

「私には、そんな自覚がなかったんだけど……。そうなのかな?」

「ああ。今までの由香って、話しかけても最低限の返事くらいだったろ? でも、無理矢理押し通した政略結婚なのに、由香はオレと最初から向き合ってくれた」

向き合うってほど大袈裟なものじゃないけど、確かに智紀だってそれまでに抱いていたイメージとは、だいぶ違ってる。

突然の告白から始まって、想像以上に私に真っ直ぐ気持ちをぶつけてくれるから、こっちも自然とそれを受け止めていたのかもしれない。

「智紀だって、だいぶイメージと違うよ? もっと軽い人だと思ってた」

正直に言うと、智紀は眉を下げて苦笑いをしている。

「ショックだなぁ。見た目や仕事柄っていうのがあるんだろうけど、こう見えて一途なんだぞ?」

本気で口を尖らせる智紀に、私は笑いを堪えられなかった。

「自分で言う? 一途かどうかなんて、付き合ってみないと分からないよねぇ」

わざと意地悪く言うと、彼はムッとした表情で私の体にまたがると見下ろした。
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