はじまりは政略結婚
うつろな意識の中で、香ばしいコーヒーの香りがする。
「由香、おはよう。起きろよ、朝だぞ?」
智紀の優しい声がして、ゆっくりと瞼を開ける。
「ライオンのたてがみ……」
「なんだよ、それ」
半分寝ぼけた頭で呟くと、智紀はしかめっ面をした。
「智紀の髪形がってこと。それが一番戦闘態勢だもんね」
一度抱いてもらって分かったけれど、私はこの髪形が好きじゃない。
それは好みの問題とかじゃなく、彼が一番遠くに感じる姿だから。
二人きりの時に伝えてくれる気持ちは、真剣なものだって本当は分かってる。
でも、そんな思いを素直に受け止められないのは、この姿があまりにも自分と不釣り合いなくらいに華やかだからだ。
「戦闘態勢? よく分からないけど、ほら起きろ」
腕を引っ張られて渋々起き上がったものの、まだ頭がポーッとしている。
そんな私を見ながら、智紀はネクタイを締めていた。
「オレはもう出るけど、コーヒー入れてあるから温かい内に飲めよ? それから、今日からはこれをつけて……」
そう言った彼は、チェストから指輪を取り出して、左手薬指にはめたのだった。
「由香、おはよう。起きろよ、朝だぞ?」
智紀の優しい声がして、ゆっくりと瞼を開ける。
「ライオンのたてがみ……」
「なんだよ、それ」
半分寝ぼけた頭で呟くと、智紀はしかめっ面をした。
「智紀の髪形がってこと。それが一番戦闘態勢だもんね」
一度抱いてもらって分かったけれど、私はこの髪形が好きじゃない。
それは好みの問題とかじゃなく、彼が一番遠くに感じる姿だから。
二人きりの時に伝えてくれる気持ちは、真剣なものだって本当は分かってる。
でも、そんな思いを素直に受け止められないのは、この姿があまりにも自分と不釣り合いなくらいに華やかだからだ。
「戦闘態勢? よく分からないけど、ほら起きろ」
腕を引っ張られて渋々起き上がったものの、まだ頭がポーッとしている。
そんな私を見ながら、智紀はネクタイを締めていた。
「オレはもう出るけど、コーヒー入れてあるから温かい内に飲めよ? それから、今日からはこれをつけて……」
そう言った彼は、チェストから指輪を取り出して、左手薬指にはめたのだった。