はじまりは政略結婚
それはプラチナリングらしく、シンプルなデザインで、中央部分には小さなダイヤが埋め込まれている。

「何? どうしたの、この指輪……」

すっかり目が覚めて、キラキラと輝くリングを食い入るように見てしまっていた。

「よく考えたら、婚約指輪は派手だったろ? 普段身につけるのには、向いてないなって思ってさ。だから、これを買ってきたんだ」

「えっ⁉︎ わざわざ⁉︎」

キレイな指輪で嬉しいけど、一体何の為なんだろうと考えると、戸惑いの方が大きい。

「そ、わざわざ。これは、由香はオレものっていう印。嫌なら、外してくれて構わないから」

ニヤッと笑う智紀は、まるで私の心を見抜いているみたいだ。

そのせいで照れ臭くなり、素っ気ない返事を返すだけで精一杯だった。

「ううん。せっかくだから、はめておく……」

すると彼はさらに口角を上げると、足早に私の側にきて軽く唇を重ねた。

「じゃあな。行ってきます」

軽やかに身を翻した智紀は、そのまま出社したのだった。
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