はじまりは政略結婚
業務終了時刻が19時半。

その後すぐに涼子さんへ電話をすると、なんと智紀のテレビ局へいると聞いて驚いてしまった。

そんなに頻繁に出入りしているとは思わず、緊張を感じながら局へ向かう。

昨日のことがない様にと、智紀から貰ったいわゆる『VIPカード』。

それをテレビ局のVIP専用ゲートで提示をすると、最敬礼で出迎えられてしまった。

やっぱり、この雰囲気は苦手だ。

「ええと、涼子さんは6階の控え室って言ってたよね?」

エレベーターを降りて部屋を探す間、今回はいろいろな人とすれ違って萎縮してしまう。

いかにも撮影スタッフといった出立ちの若い男性が、足早にどこかへ向かいながらイヤホンで会話をしていた。

他にも有名タレントやモデルたちに当たり前にすれ違いながら、そのたびに廊下の端に寄ってしまう。

「あった、あった。ここだわ」

ようやくたどり着いたのは、中央より少し奥の部屋で、ノックをすると涼子さんが出迎えてくれた。
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