はじまりは政略結婚
驚いて振り向くと、警備員が立っていて、「百瀬様を発見いたしました」とヘッドマイクで伝えている。

そのさまは、もはや警備員というよりSPのように見えて怯んでしまった。

それにしても、私はこの強面の警備員を見たことがないのに、どうして彼は分かったのだろう。

「副社長室へご案内いたします」

淡々とそういう彼に、恐る恐る返事をした。

「行き方なら分かりますので、大丈夫です。エレベーターから行けるんですよね？」

すると、その人は表情一つ崩さず頷く。

「はい。ですが、一般のエレベーターからは行けれません。こちらに案内しますので、どうぞ」

「は、はい……」

また隠しエレベーターがあるのかと思いながらついていくと、不安げな私の様子を察したのか、その人が説明をしてくれた。

話によると、セキュリティの問題で、エレベーターが分かれているらしい。

社長室と副社長室、それに役員の部屋には、隠し扉の先にあるエレベーターで行かないといけないみたいだ。

それにしても、ここにも警備員が配置されていてア然とする。

一体、この局だけで何人の警備員がいるのだろう。

すると彼は、その疑問にも淡々と答えてくれた。

「人の出入りが頻繁ですので」
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