神魔妖幻想曲 ー 斬呪 ー
「……なんのこと「しらばっくれんじゃねえ。話す気がねえなら帰れ。この依頼は承(うけたまわ)らねえからな」
冷たい声と表情に怖じ気づくリーシャ。すこし躊躇しながらも黒づくめに目を合わせた。
「…実は、私の家で親族の財産争いが起こっているんです……。特に金持ちだったわけじゃないのに、いきなり遺産争いなんて………」
「遺産、つーことは誰か死んだんだな?」
「はい。……私の父です。1週間前ほどに亡くなりました。それも突然…っ」
膝上においた拳を握り、涙を堪えようと下唇を噛むリーシャ。
その様子を黒づくめ同様、ユウヤとナルミも黙って見つめていた。
目線が少し下に向いてしまったリーシャは「そして、」と言葉を続け顔を上げる。
「突然だった父の死の直後に、不可解な謎が次々と起こったんです……!
父は関係ない。これは全部偶然なんだ。………そう、自分に言い聞かせてきましたが……」
口ごもるリーシャ。その様子に黒づくめが気づき前髪の間からリーシャを見つめた。
「……なんかあったのか」
「っ、……その、昨日突然この街にとある団体がやって来たんです…っ。それで私の所へ赤い手紙を持ってきて………。
去り際にこう言ったんです。
『この謎は偶然ではない。ひとつ、思い当たることはないか?悪いことは言わない。
………明後日の夜、ここに来なさい』
……最初はなんのことだか分かりませんでした。でも、その人たちが去った後に、直感的に思ったんです。
これは、父のことを言っているんだと」
「………。」
うつ向くリーシャの目には涙が溜まっていた。