偽善的マンネリズム
「シャワー浴びよ」
胸あたりまで被せていたシーツを勢いよく取り去ると、素っ裸でベッドを下りた。
気怠い身体にムチを打つように、溜め息を吐き出してバスルームまで裸足で歩く。
ちなみに私は、自動車関連会社のとある事業所で営業事務をしている。
つまり、あの男は私の直属の上司。ただし、向こうは本社からやってきたお目付役で、県内すべての営業所を統括する人物。
しかも、本社からの要請で出張ばかりの男に会う機会は滅多にない。
なんなら夜の時間がその月初の顔合わせだったりするが、どうでも良い話か。
――それもこれも、事業所トップの売り上げを当店が出した際、打ち上げの席で酔っぱらった私のキス魔という悪い性質が出たせいだ。
仲良しの同僚(ゲイで彼氏ありな男)を捕まえてチューしたつもりが、よりにもよってあの男の唇を奪っていたのだから。
当然その場は凍りつき、飲んだくれの私の目もすっかり冴えた。