偽善的マンネリズム


常に涼やかな微笑で一切の反応を見せない、手厳しい上司の表情があまりにも冷たくて。


『君、ちょっと来なさい』

誰もが上司の天誅だと間に入ってくれることもなく、会場の居酒屋から連れ出された私。


いま思えばとんでもない話だ。なのに誰もがご愁傷様と悲観的な視線をくれただけ。


無言を貫く上司の隣で借りてきた猫のように、ちょこんと座った私がタクシーで連れられてきたのがこのホテルだった。



さてここで問題です。――化けの皮を剥がしたのは一体ダレ……?



「ヤツに決まってんじゃん!」

ジャージャーと勢いよく出るシャワーに打たれながら、ひとりツッコミを入れた。



10歳も上の男は同世代にはない落ち着きが色気を放ち、様々な経験も豊富。


お陰で会話にはまったく困らないが、セックス中に仕事の話はナンセンス。


バーで待ち合わせはするものの、帰りは一緒に部屋から出ない。結局、彼との会話時間など微々たるものである。


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