color ~蒼の色~

ガタガタンッ…と、背後からの物音。

(見つかった!?)

ざくざくと砂利を踏みしめる音がどんどん近づいてきて、それに比例するように、私の心臓もばくばくしていた。

(どうしよう、怒られる!)

砂利を踏みしめる音が止まったかと思えば、背もたれにしていた材木から体に響く振動。

(え?え?)

ばくばくが収まらないまま、完全に固まっていた私に、突然真上から声がした。



「………あれ?人間?」


はぁっっ!?


あまりの驚きで、私は声の主を穴があくほど見つめた。


薄暗い中、胴着を纏った少年が、積み上げられた材木の天辺から私を見下ろしていた。


しばらく何も言えずにいた私をよそに、少年はひょいっと私のとなりに飛び降りてきた。


「………あ、お前。隣のクラスの…」


言われて私も気づいたんだ。


「あっ!!変人の松田!!」

「“吉野人形”の吉野さん」

「…………………」


当時の私のあだ名は、日本人形ならぬ、吉野人形。

にこりとも笑わず、おまけに黒く長い髪。

当時の私も今と変わらず、とっつきにくい子で、友達なんていなかった。


「何してんの?」

「そっちこそ何しに来たの?」


どう見ても、こんなとこに来るような格好じゃない。

私がじろじろ見てると、総二郎は言った。


「あ、俺、脱走」

「へ?」

「うち、空手の道場だから」

めんどくさくて脱走してきた、と総二郎は言った。
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