color ~蒼の色~
「それより、ここに人間いるのがびっくり」


そりゃいるだろう、人間の世界なんだから。
むしろあんたはここが地球外生命体の住む星だとでも言いたいのか。

いろいろ言いたかったけど、なんせ相手は“変人”の異名を持つ、松田 総二郎。


何を言葉にしていいやら混乱していると、総二郎は言った。


「ここに、太郎さんいなかった?」


いきなりなんだろう、この宇宙人!!


「は!?」

「いや、だから太郎さん」

「だから!それ誰!?」

「誰って……、あー。猫な、猫」


いきなり“太郎さん”とか言うし。
人かと思えば猫だって言うし。

ほんといきなりすぎて、意味わかんない!


“噂の変人君”と、まともに話したのは初めてだった。


「おい、お前も探せ」

「え!?」

「太郎さんだよ。…お~い!太郎さ~ん!……ほら、早く」


呆気にとられる私に、さして気にする素振りもなく、それどころか太郎さんを探せとか言う始末。


「………た、たろうさぁ~ん?」


何探してんだろ、私。


とか思ってはいたけど、

“そこから立ち去る”

って選択肢が出てこなかったのはなんでだろう。

太郎さんの名前を呼び続ける私と総二郎。


チラッと盗み見た総二郎の背中は、白い胴着に夕日が被さり、オレンジになっていた。
< 11 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop