color ~蒼の色~
材木の積み木に囲まれ、私と総二郎は何を話すでもなく、どこからともなく現れた“太郎さん”と、二人と一匹で過ごしていた。

太郎さんは人なつっこく、この辺りに住む野良猫だと、総二郎は言った。

白と黒の二色の太郎さん。

私たちに撫でられ、気持ちよさそうに寝転がっていた。


「お前んち、どこ?」

「商店街の向こう」

「ふーん」

聞いておきながら、興味なさそうに言われた。

私とのこの空気が気まずいんだろうか。

辺りが暗くなっていくのと同じように、私もどんよりとした気持ちになっていたら、総二郎は言った。


「“よしの”じゃねーの?」

「え?」

「だから、“よしの”じゃねーの?」

聞かれたことにしばらく疑問符が並んだけど、総二郎の言う意味がやっとわかった。


「それは父さんの店」

「へー」



総二郎の言う“よしの”は、私の父さんの店の名前。


「知ってんの?」

「うん、そこうちの親常連だから」

「そっか」


そんなに遠い距離ではないし、同じ町内だから、そういうこともあるか。

そんなふうに思った。


「こっち、お前んちと逆だろ?何してんだ?」


私はいまさらな質問に答えを探した。


「“めんどくさいから”サボってんの」


そうだ。

これがピッタリなんだ。

母親のいる家がめんどくさくて、私は“家族”であることをサボっている。

意味がわかってるのかどうなのか、変な奴とでも思っているのか、総二郎は、

「ふーん」

と言った。
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