color ~蒼の色~
辺りは真っ暗になり、時計も持ってない私は、そろそろこの時間も終わりかな、と立ち上がった。

スカートに付いた砂を払い、空を見上げた。

「真っ暗。もう帰るね」


体が重い。

決して楽しいと言える時間ではなかったけれど、私は総二郎と材木に囲まれていた時間に、何故だか名残惜しさを感じていた。


「お前んち」

帰ろうとしたとき、総二郎も同じように砂を払いながら立ち上がった。

「チャリで行ったら早くねー?」

「え?」


そう言うと総二郎は歩き出し、材木置き場の入り口に向かった。

私はその後に続き、総二郎の背中を見ていた。


「これ、俺の“三郎さん”」


言って指差したのは、黒い自転車。


「さぶろーさん?」

「そう。この前買ってもらった。ちなみにこれは、三郎さん3号」


そう言った総二郎に思わず笑ってしまった。


「なにそれ!?四郎とか五郎とかじゃないの!?」

「三郎さんは、永遠に三郎さんだ!」


もうおかしくて、ほんと変だわこいつ!って思ったのに、私はどうしようもなくこの時間が好きだと思ってしまった。


「いつもここにいる?」

「どうかなー」

その答えに寂しささえ覚えた。

そのまま私は“三郎さん3号”の後ろに乗り、暗くなった道を、総二郎の背中と交互に見ながら家まで送ってもらった。

また、こんな時間がこればいいな。

そう願いながら。
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