color ~蒼の色~
次の日、学校で総二郎を見かけた。

(体育してる…)

なんともやる気のなさそうな走りで、嫌々走ってる総二郎を見ると、思わず笑いそうになった。

あとで声をかけてみようか、とも思ったけれど、学校での総二郎と昨日の総二郎は“違う人”のように感じて、なんとなくやめておこうと思った。



いつものように下校し、私はいつものように父の店に向かった。

今日も材木置き場にいるだろうか、そう思いながら。


店の引き戸を開けると、いつもの父の「おかえり」と、いつもと違う「おかえり」が聞こえてきた。

「あ!松田!」

「うーっす」


松田だ!
松田がいる!!


妙に高ぶる気持ちで、私も総二郎と同じようにカウンターに座った。

父が出してくれた麦茶を飲み干し、総二郎に言った。

「なんでいるの?」

「別に、遊びにきただけ」

その一言が、嬉しかったんだ。


「お前ら、友達だったのか?」

「まーねー」

私が答えるより早くそう言った総二郎。


顔には出さないけど、浮かれてる私。


あ、昨日の総二郎だ。


それからというもの、学校が終われば店で会う。

稽古のある日は来れないこともしばしばあったけど、元来めんどくさがりな総二郎。

隙を見つけては脱走し、材木に囲まれ遊んでいた。


楽しくて仕方がなく、ずっと続けばいいと思った、小学四年の夏。


夏休みに入れば、もっともっと遊べるんじゃないかと思っていた矢先、その時間をぶち壊すあの出来事が起こった。
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