color ~蒼の色~
手はぶるぶる震えていた。

頭だって真っ白だったし、

「あお」

背中で総二郎の声を受け止めた。

頭上からの笑い声に、振り返ることも出来ない。
顔、見るの怖い。

走って帰りたいのに、動きそうにない、私の震えた足。

もう泣きたい。
もうやだ、自分。

視界がぼやけて、赤いランドセルが歪んで見えた。

泣くなって思っていても、やっぱりだめだ。

私、ほんとだめだ。


そのときだった。


「おーいっ!ゆーうーたーっ!!」

総二郎の声で、固まっていた私はビクリとした。

恐る恐る振り返れば、視界に入るのは、涙で歪んだ総二郎の背中。

上を見ながら総二郎は言った。


「ゆーたぁ!俺の投げてー!!」


何を言ってるのかわからなかった。

ただ、ゆうたと呼ばれた隣のクラスの子は、

「えぇ!?お前の!?」

と答えうろたえていたように思う。

…………隣のクラスにまで見られてたんだ。

わぁわぁ泣き出したい気持ちをとめたのは、総二郎の一言だった。



「あお、まだ泣くな」
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