color ~蒼の色~
「はーやーくー!!」

言うやいなや、ドサッと落ちてきた黒いランドセル。

「よいしょっと」

それを拾い上げ、投げてくれた子に総二郎は一言、

「じゃーなー!」

と右手をあげた。

左手には私の右手をしっかり掴み、走り出した総二郎。


「あお、走れ!」

顔は見えない、足はもつれる、思考が追いつかない。

それでも止まる様子もなく、ぐいぐい引っ張られるように校門を出た。


後ろからいろんな声がしたけど、何を言われてたかさえ覚えてない。

ただ私の手を掴み、前を走り続ける総二郎の背中を、歪む視界で見ていた。



どれぐらい走ったのか。
どこを走ったのか。

回らない頭を、現実に引き戻したのは総二郎だった。


「あお、もういいよ」

「え?」


「泣いていいよ」


立ち止まった総二郎は、振り返りもしないでそう言った。


止まったままだった私の時間が、急に動き出したかのように、私は声をあげて泣いた。


「泣いていいよ」


その一言で、我慢していたものが一気に溢れ出た。


わぁわぁ泣く私の手をしっかり握りしめてる総二郎の手のぬくもりは、今でも私の右手が覚えてる。

泣き止むまで、ずっとそうしてくれてたから。
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