color ~蒼の色~
そう言って笑うから、私の中の重くどろどろしたものが、さらさら流れていった気がした。


「謝らない」

「はぁ!?」

「私、何もしてない。謝らない!」

自分でもよく言ったもんだと、今でも思う。

そのときの私は、隣で笑っている総二郎の腕をしっかり握っていて、今まさに怖いもんなんてないんだというぐらい、はっきりと言葉に出来た。


総二郎はさも面白いというように、声を上げて笑っていた。

「そーそー!してないなぁ!」


笑った、総二郎が。

なんだか私まで笑いだしてしまいそうなぐらい、この場の空気なんて何のその。

総二郎の笑い声が、私の緊張をほぐしていったんだ。


だけど、聞こえた怒声で私は、自分のやらかしたことに気が付いた。


「うるせぇ!!吉野人形!!気持ち悪いんだよ!!」


何かが私の目の前に飛んできて、音を立てると同時に、私の視界には空が広がっていて、私の鼻は馴染んだ匂いを捕らえていた。


「あお、大丈夫?」

なんのことだろう?

あれ?私いつの間にしりもちついてるの?


「あお、大丈夫?」

声の聞こえる方に視線を向ければ、片膝ついて、私を見ている総二郎がいて。


「そこ、触ったらだめだ」

言われたところを見れば、茶色の破片と土、その上に点々と落ちてくる紅い雫。


何が起こったのかわからなかった。
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