color ~蒼の色~
呆然とする私の耳に、悲鳴が聞こえ、周りがざわめきだしたときに、やっと私は何が起こったのか知ることができた。

立ちすくむ男の子、割れた鉢植え、泣いている女の子。

私の前には、私の腕を掴み、立たせようとする総二郎。

そして、真っ赤に染まった総二郎の手。


ポタポタ……ポタポタ……。


紅い雫は止まることなく、私の視界まで染めていった。


「やだぁ!!なんっ………何で!?なんでよぅ!!」


どうして総二郎が怪我を?

「血っ…とめなきゃっ!……はやくっ」

「落ち着けって、あお」


なんで庇ったりしたの!?

「な…っんで、そーじろー…っ!…なんでっ!?」

「あお、あお。大丈夫、大丈夫」


そんなはずない、痛いはずなんだ。


私ばかりが泣いて、総二郎は泣くどころか、ずっと私に大丈夫と言い続けた。


まただ。
また私は総二郎を巻き込んだんだっ!


私の涙は止まらず、その後のことははっきりと覚えていなかった。

先生達が駆けつけ、私は保健室で、外から聞こえる救急車のサイレンを聞いていた。


先生に何を聞かれても泣くばかりで、私は答えることも出来なかった。


迎えに来た母に、

「どうして!?なんで怪我させたりするの!?」

泣きながら母は私を罵った。


そうだ、あれは私のせいなんだ。


もうきっと、あの日常には戻れない。


私は今までの時間が、じわじわと濁って消えていく様を、まるで他人事のように感じていた。


あれは私だったのかな。

あんなに楽しそうに笑っていた私を、まるで別の誰かのように感じた。
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