color ~蒼の色~
それからの私は、ほんとに人形のようだった。

学校に行っても、ただそこにいるだけ。
周りは何もしてこなくなったけど、こそこそ言われてることは知っていた。

気にもとめなかったし、どうでもよかった。

私はただ、そこにいてるだけ。


店にも行かなくなり、ただじっと部屋で過ごし、時間だけが過ぎていった。


数日後、総二郎が登校してるのを知った。

右手の包帯がチラッと見えた時、どうしようもない息苦しさで、顔を見ることも出来ず。昼休みも教室から一歩も出なかった。

もう会えない。
もう笑えない。

時間なんて戻ってこない。


悲しくて、悲しくて。
どうしようもない自分。


そんな私の殻を、壁を。

あっさりぶち壊してくれたのは、やっぱり総二郎だった。


「あお」

帰ろうと門を通ろうとしたとき、一番聞きたくて、一番聞きたくなかった声がした。


「あお」


その状況が理解できなくて、そして怖くなって。

私は顔も見ずに走り出した。


だけど気づけば、私の前に、会いたかったあの背中。


「お前より、速いっつーの」


掴まれた手のぬくもりが、私の壁を壊すんだ。


「泣いていいよ」

「……………っ」

「あお、我慢すんな」


「………うぇっ、…そぉじろぉっ」

「あははっ」

笑って、泣いた、私たちの帰り道。
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