color ~蒼の色~
今日のノルマを終え、片付けもせずにゴロンと寝転がった。

私の向かいに座る総二郎からは、

「まる、問3は~…ボク、田中じゃアリマセーン」

(いったい何の宿題やってんだか…)

理解不能な言葉が聞こえてきた。

(あ、お布団入れなきゃ)

遠くで蝉の声を聞きながら、ぼんやり考えていた。


中学にあがる頃、父さんは家を出て行き、店の二階に住むようになった。
私も一緒に行くと言ったけれど、それだけは許してくれなかった。

ただ、今まで通り店を手伝うことは許してくれていたので、私は夏休みになると、朝からここに居座った。

洗濯、掃除、お手伝い…。
通い妻みたい、と父さんと笑った。

離婚してないところをみると、きっと子供のことを考えてのことかもしれない。
私はともかく、妹の茜はまだ小さい。

(それも遅かれ早かれ…)

それぐらい、夫婦仲は修復不可能なところまで来ていた。


「蒼、カキ氷食いにいかねー?」

「布団入れてからね」

「何味?」

「んー…今日はイチゴ」

「半分こなー」


私は干していたものを取り込み、総二郎は教科のわからぬ宿題を終わらせ、じりじりと焼かれるコンクリートに足を踏み出した。


(今日もあっつーい…)
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