color ~蒼の色~
「蒼、そこにそれ貼っといてくれ」

父にクルクルと巻かれた紙を渡され、それをひろげた。

(花火大会のポスター…)

総二郎が帰り、開店準備をしていた私は、つい先ほどのこと思い出し、ポスターに見入っていた。

「行きたいのか?」

「え?」

「たまには行ってきたらどうだ?ジローと」

あんまり私がそれを見ていたから、父は私が行きたがってると勘違いしたらしい。

「いいよ、興味ないし。それに総二郎、女の子と行くと思う」

「へぇ、あいつがか!そら驚いた!」

父は笑いながら、そんな年頃か~、若いね~と、ジジ臭いことを言った。


「お前、寂しいだろ?」

にやにやしながら私に言うもんだから、見透かされたようで恥ずかしくて、

「あんな変人、好きになる女の子いるんだね!」

って言ったら、また笑われた。

「確かにあいつ、ちょっと個性的だからなぁ!」

あっはっはっは!と、しばらく笑いは止まなかった。


何が面白いんだか。


開店してしばらく店内を忙しく動き回り、夜も7時を過ぎた頃、父に帰るように言われた。


「蒼、気をつけてな」

「うん、また明日ね。それと、洗濯物脱いだら、色物はちゃんと別の籠に入れて!」

「はいはい、厳しいなぁ、うちの娘は!」

お客さんの笑い声を背に、店から出た。


(暑い…)


私は額の汗を拭いながら、家までの道をとぼとぼ歩いた。
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