color ~蒼の色~
まもなく商店街を抜けるというところで、背後から、
ぱふっぱふっ
と音がした。

「あお~」

「あんたね、そのベルやめたら?」

「お前にはこれがベルに見えんのか?これは“ラッパ先生”だ」

「はいはい…」


三郎さんに乗った総二郎だった。

「さっきメシ食いに親父と行ったら、ついさっきお前が出たって聞いて、送ってこいって」

「そりゃどーも」

「歩くか?」

「うん」

家までの道のりを、乗るか?とは言わない総二郎。
私が帰ることを嫌がってるのを知っているから。

「父さんに、花火大会行くか?って言われた」

「へー、おやっさん、店休めんの?」

「休めるわけないでしょ。それに行かないって言った」

「ふーん」

「総二郎は?」

「俺?」

「行くの?花火大会」


好奇心と、少しの期待を含んで、私は聞いてみた。


「んー…、今年は行くかなー。断ったけど、しつこかったし」

「そっか」



『蒼も一緒にいこう』

そう言ってもらえることを期待してたけど、そんな小さな期待は、あっという間に消えていった。

峰さんだ。
きっと峰さんと行くんだ。


それから特にその話題には触れず、取り留めのない話をしながら帰った。

「ありがと」

「明日はうちな」

「うん」


手を振って、総二郎の後ろ姿を見送った。
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