color ~蒼の色~
「蒼ちゃん、何してるの?」

「わぁっっ!!」

突然背後から声をかけられ、叫んでしまった私は、しばらくばくばくする胸を押さえ、悪いことして見つかった気分になり、なかなか振り返ることが出来なかった。

「おじさん」

「総に用事か?中に入っていいよ」

「いい、ちょっと見てただけ」

「そっか」

総二郎とおじさんは、どこか雰囲気がよく似ている。
そのせいか、本人に見つかった気分にさせられる。

「総二郎、背、伸びたね」

「そうだね、おじさんも抜かされそうだ」

しばらくまた二人を見ていたけど、なんだか邪魔しちゃいけない気がして、その場を去ることにした。

「私、帰るね」

「もうちょっとで終わるし、送ってもらえばいいじゃないか」

「いいよ、歩いて帰る」


挨拶もそこそこに、私は総二郎の家を出た。


(私、いつの間に身長抜かされたんだろう…)

去年は同じぐらいだったはずなのに、いつの間にか抜かされていた。
遠くで見ると、それがよくわかった。

さっきの子との身長差が、ますますその子を“女の子”にしていた。


(私、場違いだったな…)


いつまで、このままでいられるかな。
いつまで、総二郎と歩けるだろう。

私が気づかないだけで、ずっと先を歩いている総二郎。


(置いてきぼり…)


夕暮れ時。
流れる汗を拭いもせず、はりつく髪の不快感を抱いたまま、私は帰り道を歩いた。
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