color ~蒼の色~
「蒼、昨日なんで黙って帰った?」

「え?」

まさか居心地悪くて帰りました、とも言えない。
さらに、この空気でそんなこと言えるほど、空気が読めないわけじゃない。
(ここは、いつもみたいに…)

「石ころ拾って待ってられるわけないでしょー!」

と、つとめて明るく言ったのに、

「ふーん」

ノリの悪い返事が返ってきた。
(いつもの調子で返事してよね…)
ますます落ち着かなくなってきた…

また下を向いた私の手に収まっていたカキ氷が、いきなり取り上げられた。

「ちょっと、まだ食べてる…」

「はい」

そう言って、今度は総二郎のカキ氷を手渡された。

「え?」

「半分こ」

「……………………」

今度は私が黙り込んでしまった。

同じのふたつあるじゃん。とか、なんでわざわざ半分こ?とか、言いたいことならあるのに言えなかった。
ただ黙って、レモン色に染まった冷たいものを見つめていた。

「もういいや、おなか冷えそう」

「じゃあふたつもいらねーだろ」

「……………………」

なんだろう、なんか責められてる気がするのは私だけか?

「そうだけど…」

「お前、なんかおかしい」


その言葉に私は、息がつまってしまった。
< 43 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop