color ~蒼の色~
「どこが?」
「いや、なんとなく」
「何それ…」
「おばさんと、なんかあった?」
…………あ、気づいてない、よかった。
きっと私が、また家で嫌なことでもあったのかと思ってるらしく、内心気づかれてないことにホッとした。
「ないよ、あいかわらず喋ってないし」
「ふーん」
原因はあんただよ…って言えたら、本当は楽なんだろうな。
溶けた氷を見ながら、私は昨日の光景を思い出していた。
(レモン色。さわやかな色。彼女にピッタリ…)
そう思うと、私にはひどく不釣合いに思えた。
「お前、あんまり無理すんなよー」
…………あ、いつもの総二郎だ。
「うん、嫌になったらどっか行っちゃおうかと思ってるし」
「なんだそれ、面白そうだな~。お供するぞー」
「連れてかないよ、バカ二郎」
いつもみたいに笑って言うから、私も笑って答えた。
「これ、捨ててくるね」
「蒼、最後の一口、あーんしろ」
そう言って総二郎は私にスプーンを向けてきた。
目が合った総二郎は、なぜか笑っていなくて。
スプーンですくった最後の一口だって、原型のないレモンの液体で。
それでも私が口を開けるのを、黙って待っていた。
ぽたり、ぽたり。
こぼれるレモン。
私はまるで操られるように、口を開けた。
「いや、なんとなく」
「何それ…」
「おばさんと、なんかあった?」
…………あ、気づいてない、よかった。
きっと私が、また家で嫌なことでもあったのかと思ってるらしく、内心気づかれてないことにホッとした。
「ないよ、あいかわらず喋ってないし」
「ふーん」
原因はあんただよ…って言えたら、本当は楽なんだろうな。
溶けた氷を見ながら、私は昨日の光景を思い出していた。
(レモン色。さわやかな色。彼女にピッタリ…)
そう思うと、私にはひどく不釣合いに思えた。
「お前、あんまり無理すんなよー」
…………あ、いつもの総二郎だ。
「うん、嫌になったらどっか行っちゃおうかと思ってるし」
「なんだそれ、面白そうだな~。お供するぞー」
「連れてかないよ、バカ二郎」
いつもみたいに笑って言うから、私も笑って答えた。
「これ、捨ててくるね」
「蒼、最後の一口、あーんしろ」
そう言って総二郎は私にスプーンを向けてきた。
目が合った総二郎は、なぜか笑っていなくて。
スプーンですくった最後の一口だって、原型のないレモンの液体で。
それでも私が口を開けるのを、黙って待っていた。
ぽたり、ぽたり。
こぼれるレモン。
私はまるで操られるように、口を開けた。