color ~蒼の色~
私の口に、薄くなったレモンの味がひろがった。
口の端から垂れたレモンの雫を、総二郎の親指が辿っていった。
指、熱い。
違うな、熱いのは私だ。
総二郎は手を引くこともなく、指で何度も跡を辿り、親指を私の下唇にあてた。
軽く押したり、なぞったり。
私はただ、されるがままだ。
動けない、目が離せない。
どれぐらい続いたのか、私の硬直を解いたのは、父の声だった。
「蒼ー!いるかー?」
……………あ、お父さん。
「はぁい!」
下に聞こえるように返事をし、ゆっくり立ち上がった。
「私、昨日ノルマやったから、手伝ってくる」
「おー、終わったら下行く」
「ん、さっさとやりなよ」
「へーい」
身体は驚くほどスムーズに、階段を下りていった。
なんだったんだろう、今のは。
固まって動けなかった。
考えても答えなんて出なくて、ただ夢でも見てたんじゃないかと思うほど、現実味がなかった。
口の端から垂れたレモンの雫を、総二郎の親指が辿っていった。
指、熱い。
違うな、熱いのは私だ。
総二郎は手を引くこともなく、指で何度も跡を辿り、親指を私の下唇にあてた。
軽く押したり、なぞったり。
私はただ、されるがままだ。
動けない、目が離せない。
どれぐらい続いたのか、私の硬直を解いたのは、父の声だった。
「蒼ー!いるかー?」
……………あ、お父さん。
「はぁい!」
下に聞こえるように返事をし、ゆっくり立ち上がった。
「私、昨日ノルマやったから、手伝ってくる」
「おー、終わったら下行く」
「ん、さっさとやりなよ」
「へーい」
身体は驚くほどスムーズに、階段を下りていった。
なんだったんだろう、今のは。
固まって動けなかった。
考えても答えなんて出なくて、ただ夢でも見てたんじゃないかと思うほど、現実味がなかった。