color ~蒼の色~

夏休み~side 蒼~

それから花火大会まで、あっという間に時間は過ぎていった。

(あれは夢だったんだ…)

そう思えるほど、総二郎は何も変わらず、それでいて私もいつもの私だった。

8月末、花火大会の日。

それまでに宿題が終わっていた私たちは、その日は父に頼まれた買出しの荷物を自転車に乗せ、店までの道を歩いていた。

「これ終わったら、俺行くぞ」

「うん」

(逆方向……)

花火大会の場所とは真逆にある父の店。
届けてもらうほど、重たいものでもない。
それに、店でバイバイするよりは、きっとここで別れたほうがいいだろうと思ったので、私はかごに乗せていた荷物を手に取った。

「ここでいいよ、ありがと」

「店まで行くって」

「いいよ、待ち合わせ場所、反対でしょ」

両手に袋を持ち、まっすぐ総二郎を見た。

「じゃあね、気をつけてね」

(ちゃんと、いつも通りの私だ)

そう言って、総二郎に背中を向けたけど、すぐに呼び止められた。


「蒼」

振り返って見た総二郎は、ハンドルに両肘をつけ、じっと私を見ていた。

「何?」

その目に、一瞬あの日の総二郎を思い出し、私の体温が一気に上がったような気がして、それを悟られないように、平然を装った。

「蒼、帰ったら…」

帰ったら、何?

少し間を置きながら話す総二郎の目に、私はすっかり捕らえられていた。

「りんご飴、食おう。おっきいやつ」

「おっきいやつ?」

「そう、俺と半分こ」

そう言うと、右手をひらひらさせ、総二郎は自転車で駆けていった。

私は多分、真っ赤になった顔で、見えなくなるまで見ていた。

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