color ~蒼の色~
私に、何の話もせぬまま離婚し、出て行けと、簡単な荷物を突きつけた母。
遅かれ早かれ、そうなることはわかっていたのに。

(こんな風に突きつけられると、こたえる…)

もちろん私は父さんについていくつもりだった。
だけど、一言聞いてくれてもよかったじゃないか。

私に選択肢を、私の答えを、聞いてくれてもよかったじゃないか。

沸々と沸いてくる、どうしようもない感情を、私は母にぶつけた。


「一言、聞いてくれてもよかったんじゃないの?」


黙って私を見ていた母は、ぶるぶると声を震わせて言った。

「何を?あんたは、昔から“お父さん、お父さん”。何を聞けって言うのよ!?」

―――――それ、悪いことなの?

「何がいけないの?私、父さんと店を…「うんざりなのよ!!」

私の言葉は、母の声にかき消された。

「あんたみたいな子、もううんざり!!さっさと荷物まとめて出ていきなさいよ!!」

「いい加減にしろ!!」


怒鳴りつけた父と、ヒステリックになる母は、私の目の前で口論を始めた。

(あぁ、私の城が…)

大好きなお店が、どんどん落ちていくようだった。
私と母が長年作り上げた、どうしようもない、埋まることのない、深い深い溝…。


「いい加減にしてよ!!」

私はこの店が汚れて落ちていくのを、見ていられなかった。

「いつもそう!母さんこそ、何が気に入らないのよ!私は父さんと店をやっていきたいの!それが私の夢なの!!」

「勝手にすればいいわ!!あんたみたいな子、私の娘じゃないのよ!!気安く母さんなんて呼ばないでちょうだい!!」


私に投げつけられた、紙袋。

瞬間、私は店を飛び出した。


「蒼っっ!!」


父さんの声にも立ち止まらず、私は走った。


あぁ、ついに壊れたんだ。
不安定だった、わたしの家族。
< 48 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop