color ~蒼の色~
何見てんだ??

結局、視線の先がわからなくて、総二郎と交互に見ていたら、総二郎が突然駆け出して言った。

「おやっさん!」

いきなりだったので、俺も慌てて後に続いた。

「おやっさん!」

もう一度総二郎が叫ぶと、こっちに気づいた男の人が、俺たちのところに走ってきた。


「ジロー!」

じろー?
あ、こいつのことか。

「何してんの?店は?」

必死そうなおっちゃんと、表情の読めない総二郎。

誰だ?と思っていたけど、すぐにわかった。


「蒼、見なかったか!?」

「蒼?いや、なんで?」

「出てっちまった!俺が、俺らが悪いっ」

「え?」


蒼って、吉野か?
ということは、吉野の親父で…
え?吉野、どっか行ったの?


「わりぃ、ジロー。探してくれ!あいつ、母さんとな…」


一瞬だった。

ごとんっ、と落ちたりんご飴。

話も聞かず、走りだした総二郎。


とり残された俺――――。

無表情だった。
けど、“普通”じゃなかった総二郎。

落とされたりんご飴を拾い、肩で息をするおじさんに言った。

「あの、俺も探します」
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