color ~蒼の色~
総二郎も感じたの?

“おいていかれる”って。

下を向いているし、顔なんて見えないからわからないけど。
たぶん、見たってわからないけど。

今、どんな顔してるの?
私、やっぱり不謹慎だ。
嬉しくて、涙止まらないよ。

私は掴まれた手をギュッと握った。

「うん、ごめんね」

それだけしか言えなかったけど、きっと握った手から、私の気持ちは総二郎に流れていったんだと思う。
だって、ゆっくり顔を上げた総二郎に、

「お前、やっぱ俺の前では泣き虫だ」

って笑われたんだ。

私はまた嬉しくて、鼻をすすりながら笑ってしまった。


そのあと、父さんが総二郎のお母さんと立ち話してるのを、座敷に座りぼんやりと見ていた。

事情を知ってるからだろう、総二郎達がいる前で父は私に言った。

「荷物、俺があとで取ってきてやる」

私はその言葉に、黙って首を振った。

「いいよ、自分で取りに行くから」

父は何か言おうとしたけれど、総二郎がそれを止めた。

「俺も一緒に行くから」

父は「そうか」とだけ言い、とにかくゆっくり休めと言った。

店の前まで総二郎を送ったとき、私にもう一度総二郎が言った。

「俺も行くから」

「うん」

「じゃあなー。俺、疲れたから、明日は昼からなー」

と、そこにはいつもの総二郎がいた。


そうだね。
今度は一緒に行こうね。

私も、自分のケジメつけないと。


それから私も、汗だくの体をきれいに洗い流し、髪も乾かさないで、泥のように眠りについた。
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